大賞候補作の取り消しと関係者各位へのお詫び

 先日、当ホームページにて第二十一回本格ミステリ大賞の候補作を発表いたしました。
 その際、評論・研究部門におきまして『真田啓介ミステリ論集 古典探偵小説の愉しみ Ⅰ・Ⅱ』を大賞候補作五作品の中の一作としてお伝えいたしましたが、このたび当クラブの都合により、今回の投票においては同作品を候補とせず、残りの四作品のみを候補とすることといたしました。
 この件につきまして、著者である真田啓介様と版元である有限会社荒蝦夷様に多大なご迷惑をおかけしたことを、ここにお詫びいたします。大変申し訳ございませんでした。
 以下、詳しい事情をご説明いたします。どうぞ最後までお読みください。
 まず、今回の変更に至った理由につきまして、『真田啓介ミステリ論集 古典探偵小説の愉しみ Ⅰ・Ⅱ』の作品内容とは、いっさい関係がないことを強調させていただきます。同作品は二月の予選会において多くの予選委員から支持を集め、大賞候補作とすることが決定いたしました。その評価に何ら変わりはありません。しかしながら、その後になって同作品が現在では入手困難なものであることが判りました。同作品は少部数の刊行であり、版元品切れで増刷未定のため、ネット等でも現時点では購入できない状況にあるとのことです。
 一方で本格ミステリ大賞は、会員がすべての候補作を読んだ上で、投票により決定するという方式をとっております。したがって会員がすべての候補作を入手できる状況にあることは大賞を選ぶ上での大前提であります。しかし現状では、たとえ会員に投票の意思があったとしても、同作品を購入して読むことは困難であるといわざるを得ません。
 このような現状を鑑みて、当クラブ執行委員の間で検討を重ねました結果、『真田啓介ミステリ論集 古典探偵小説の愉しみ Ⅰ・Ⅱ』の候補を取り消さざるを得ないとの結論に至った次第であります。
 いうまでもなく今回、異例の措置をとるに至った責任は、すべて当クラブ側にあります。このようなケースを予見すべきところを怠り、多くの関係者様を落胆させる結果となりましたことについて、重ねて謝罪の意を示すとともに、当クラブとして深く反省すべきものと受け止めております。今後は、このようなことのけっして起こらないよう細心の注意を払い、再発防止に努める所存であります。
 最後になりましたが、同作品の受賞を期待されていた読者の皆様にも、お詫びを申し上げなくてはなりません。今回このような形で『真田啓介ミステリ論集 古典探偵小説の愉しみ Ⅰ・Ⅱ』の受賞の機会が失われたことは、多くの読者の皆様に対して深い失望を与えたものと思います。大変申し訳ありませんでした。どうか上記の事情をご理解いただけましたら幸いです。
 

本格ミステリ作家クラブ会長 東川篤哉