「本格ミステリ作家クラブ通信」第73号

1.19回「本格ミステリ大賞」候補作決定

【小説部門】候補作(タイトル50音順)
『アリバイ崩し承ります』 大山誠一郎 (実業之日本社)
『刀と傘』 伊吹亜門 (東京創元社)
『夏を取り戻す』 岡崎琢磨( 東京創元社)
『碆霊(はえだま)の如き祀るもの』 三津田信三 (原書房)
『パズラクション』 霞流一 (原書房)

【評論・研究部門】候補作(タイトル50音順)
『刑事コロンボ読本』 町田暁雄 (洋泉社)
『娯楽としての炎上』 藤田直哉 (南雲堂)
『21世紀本格ミステリ映像大全』 千街晶之・編著 (原書房)
『本格ミステリ漫画ゼミ』 福井健太 (東京創元社)
『乱歩謎解きクロニクル』 中相作 (言視舎)

第19回「本格ミステリ大賞」候補作決定のための予選会は2月16日に、大賞運営委員・霧舎巧、鳥飼否宇、遊井かなめの立ち会いのもと、予選委員・青井夏海、芦辺 拓、乾くるみ、大森滋樹、松浦正人によって行われた。

▼選考経過

【小説部門】
 今回は五名の予選委員の推薦作が分かれ、挙げられた作品は十八作に及んだ。まず予選委員一名のみが推した十一作について、推薦者から推薦理由が述べられ、候補作にふさわしいかどうか議論された。この中で、斬新な試みが評価できるという声があがった『探偵AIのリアル・ディープラーニング』と、青春小説として秀逸という意見のあった『ネクスト・ギグ』は次の検討に残すことになった。この段階で、『沈黙のパレード』、『深夜の博覧会』、『お前の彼女は二階で茹で死に』、『叙述トリック短編集』、『ドッペルゲンガーの銃』、『インド倶楽部の謎』、『友達以上探偵未満』、『帝都探偵大戦』、『虚構推理短編集 岩永琴子の出現』の九作がふるい落とされた。
 続いて、予選委員二名が推した七作に前述の二作を加えた計九作について、それぞれ長所と短所が検討された。『アリバイ崩し承ります』は端正な本格短編集で完成度が高く、前回の受賞作(『密室蒐集家』)よりも優れているという意見が多かった。『刀と傘』については動機の一部に納得がいかないという声もあったが、時代小説と本格ミステリの融合のさせ方が巧みと推す声が高かった。まずはこの二作が候補作に決定した。
『星詠師の記憶』については、発想が新鮮で推理のこねくり回し方がおもしろいというプラス評価があがる一方、論理を展開する土台がしっかりしていないというマイナス評価もあがった。『パズラクション』については、偽装工作のヴァリエーションが画一的ではないかという意見もあったものの、ロジックへのこだわりは高く評価された。『碆霊の如き祀るもの』については各種年末ランキングでも上位に入り、会員アンケートでも得票数が多かったので当然残すべき作品という見解は一致したが、過去の受賞作(『水魑の如き沈むもの』)と同一探偵の同シリーズを候補作にしてよいかどうかで意見が割れた。『夏を取り戻す』はコアな本格ミステリマニアではない読者も惹きつけられる青春ミステリとして総合点が高いと評価された。『火曜新聞クラブ』については、本格ミステリとしてやるべきことをきっちりやっていると評価されながらも、クリスティの時代ならまだしも今なぜこの作品なのかという指摘があった。
 予選委員全員の意見の一致は見ず、複数の多数決を重ねた結果、『パズラクション』、『碆霊の如き祀るもの』、『夏を取り戻す』の三作が候補作に残った。(鳥飼否宇)

【評論・研究部門】
 予選委員が推薦し、予選会で検討されたのは、次の十点。芦辺拓『少年少女のためのミステリー超入門』、押野武志 ほか『日本探偵小説を知る』、島田荘司『本格からHONKAKUへ』、千街晶之『21世紀本格ミステリ映像大全』、中相作『乱歩謎解きクロニクル』、福井健太『本格ミステリ漫画ゼミ』、藤田直哉『娯楽としての炎上』、マーティン・エドワーズ『探偵小説の黄金時代』、町田暁雄編の『刑事コロンボ読本』、そして『奇商クラブ』での小森収の解説――である。
 まず、大賞の内規により『探偵小説の黄金時代』が、そして予選委員からの強い推薦を得られなかった『日本探偵小説を知る』が候補から外れることになった。
 次いで、予選委員の四人が推薦した『21世紀本格ミステリ映像大全』と『娯楽としての炎上』を候補とすることが決定。前者はお笑いまでも対象とするエンサイクロペディア的な内容が評価された。後者には結論ありきだという厳しい意見もあったが、「これだけの問題意識をもって書かれた評論書は過去なかった」という称賛の声があがった。
 続いて、残り六点の検討へ。『少年少女のための~』は初心者向けの啓蒙書としての誠実さが評価されたが、突き抜けて高い支持は得られなかった。会員によるアンケートでは最も票が集まった『本格からHONKAKUへ』は、ばらのまち福山ミステリー文学新人賞の選評に歴史的な意義があるという声もある一方で、現代本格への認識に見落としがあるという指摘もあった。
 予断があると疑問視する声もあった『乱歩謎解きクロニクル』だが、切り口の鋭さが注目された。『漫画ゼミ』は網羅性の低さも指摘されたが、『21世紀~』とセットで評価したいという意見もあがった。
 史料性も高く編者の意図も明確な『刑事コロンボ読本』だが、一つの映像作品に特化した本を本格ミステリ大賞の候補とすることへの懸念の声があがった。候補とすることの難しさは、『奇商クラブ』の解説についても問われることになった。
 議論を経たのち、まずは『乱歩謎解きクロニクル』に当確が灯り、『本格からHONKAKUへ』が候補から外れた。残り四作で二作を競う展開になったが、『刑事コロンボ読本』と『漫画ゼミ』を委員三名が支持したことが決め手となり、残りニ枠はそれらを候補作とすることに意見の一致を見た。(遊井かなめ)

▼選評

◎青井夏海
『アリバイ崩し承ります』『刀と傘 明治京洛推理帖』はぜひ残ってほしい二作でした。ほかに『星詠師の記憶』『お前の彼女は二階で茹で死に』を推しましたが、魅力を語りきれなかったことを反省しています。『夏を取り戻す』は一点ピンとこない部分があり、読み応えを感じながらも全面的に推せない気がしていましたが、他の委員のご助言ですっきりと氷解し賛同に至りました。
 評論・研究部門は、本格への関心の間口を広げられる作品という観点で『娯楽としての炎上』『21世紀本格ミステリ映像大全』『本格ミステリ漫画ゼミ』『少年少女のためのミステリー超入門』を推しました。『刑事コロンボ読本』については、映像関連が二作並ぶのはどうなのだろうという疑問から、『映像大全』を推すなら諦めなければと勝手に決め込んでいましたが、それぞれまったく別の意義があるので両方でもよいのではというご意見をもっともだと思い、迷わず賛同しました。

◎芦辺 拓
 小説部門と評論部門の両方で、自著がいかに候補にふさわしくないか縷々説き聞かされるという体験は、なかなか人間修業となるものだった――ということはともかく、会員アンケートを道しるべとして出会った多くの作品を絞りこんでゆく作業は、はなはだ困難なものでした。個々の作品の位置づけを考え、かつまた投票者にとって偏りないものにしようとすればするほど、かえっていろんな矛盾が生じるのです。そうしたせめぎあいの結果、『深夜の博覧会』『火曜新聞クラブ』などを残しえなかったのは悔いの残るところで、評論部門に関しても、あまりにも知識や情報が更新されていないものを外し得た結果、小説以外のガイドブックが複数入ることになった結果は、会員諸氏に違和感を生じるかもしれず、つくづくと選考作業の困難さを感じさせられたことでした。ただ『乱歩謎解きクロニクル』の存在を予選委員推薦作という形で伝えることができたことだけは安堵しています。

◎乾くるみ
 小説部門は何を推すか悩んだ。予選会に推薦する五作がなかなか決まらない。泣く泣く落とした作品を他の委員が上げてきて、そうだよなやっぱり良い作品だよなと、そこでまた悩むといった具合。それでも結果には満足している。自分が推薦した五作のうち三作が残ったし、残り二作も途中で賛成に回った作品である。候補に残らなかった作品については、受賞の機会を奪ったことになるが、その責任を引き受ける覚悟はしている。特に『星詠師の記憶』に関しては、積極的反対に回ったことをここで告白しておく。同作が候補から洩れたことに不満を持つ人に対しては、必要ならば別途説明をする用意がある。
 評論・研究部門では、他の委員が推薦した作品に良いものがあり、推薦作選びの段階で未読だった自分の目の行き届かなさを反省した。こちらの部門も自分が推薦した作品や、最終的に賛成に回った作品が揃って候補に残ったので、結果には満足している。

◎大森滋樹
『娯楽としての炎上』は、結論に説得されない部分も少なくないが、久しぶりにアクチュアリティのある論考だ。「過去こうでした」「現在こうです」の他に、評論には「未来はこうなります」を期待したい。
 小説では『夏を取り戻す』を推した。「空気」を読み、推理に消極的な忖度探偵が主に学園ミステリで登場してから、推理行為は変質してきた。共同体の秩序や利害関係に探偵が敏感になってきたのだ。その結果、犯罪行為の推理は、事件関係者間のコミュニケーションツールになってきた。推理行為が情報のプラットフォームとなり、探偵やワトソン役は当事者同士の利害を調整するのである。『夏を取り戻す』ではまさに、謎を解くことが、子どもたち=犯人とのコミュニケーションの回路を開いていく。その過程の果てに、失われた「夏」を取り戻すという目的が次第に明らかになる。「夏」とはいったい何か。みなさん、刮目してご確認あれ!

◎松浦正人
 難しい選考でした。それというのも、推薦作の段階で小説部門の候補が多数にのぼったためです。少なくとも予選委員のあいだでは本命が不在であったといえますが、おかげで腰のすわった議論になかなか進めず、もどかしい思いを味わいました。例をあげるなら、他の委員のおかげで出逢えた『火曜新聞クラブ』のこと。論理重視の謎解きものを現実世界を舞台に書いたという点で稀少な秀作であったのに、踏みこんだ意見交換をもちかけられず後悔しています。コミュニケーションの能力が必要だと痛感させられました。
 これにくらべると、評論・研究部門のやりとりは活発でした。映像関係の二冊はある意味で対照的ですから、ともに本選に残って幸いだったと思います。それから、もう一点。チェスタトンの文庫解説には、去年の巽昌章氏のものとはまったく違った意味で感銘をうけました。賛同は得られませんでしたが、ひろく読まれることを本当に祈っています。

▼今後のスケジュール

05月04日(土) 消印有効にて投票〆切 
05月10日(金) 公開開票式
06月22日(土) 総会・贈呈式パーティ
         15:30~17:00 総会
         17:30~19:30 贈呈式
06月23日(日) 受賞記念座談会予定

▼候補作アンケート

27通(郵送20通、メール7通)
*31→33→42→36→35→37→30→30→27→30→27と、昨年より減少。

【アンケート結果】(タイトル五十音順)

◎小説部門
『アリバイ崩し承ります』 大山誠一郎 (実業之日本社)
『インド倶楽部』 有栖川有栖 (講談社ノベルス)
『お前の彼女は二階で茹で死に』 白井智之 (実業之日本社)
『刀と傘 明治京洛推理帖』 伊吹亜門 (東京創元社)
『火曜新聞クラブ 泉杜毬見台の探偵』 階 知彦 (ハヤカワ文庫JA)
『虚像のアラベスク』 深水黎一郎 (KADOKAWA)
『グラスバードは還らない』 市川憂人 (東京創元社)
『恋牡丹』 戸田義長 (創元推理文庫)
『合邦の密室』 稲羽白菟 (原書房)
『錆びた滑車』 若竹七海 (文春文庫)
『新・二都物語』 芦辺 拓 (文藝春秋)
『深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説』 辻 真先 (東京創元社)
『叙述トリック短編集』 似鳥 鶏 (講談社)
『星詠師の記憶』 阿津川辰海 (光文社)
『探偵AIのリアル・ディープラーニング』 早坂 吝 (新潮文庫nex)
『沈黙のパレード』 東野圭吾 (文藝春秋)
『友達以上探偵未満』 麻耶雄嵩 (KADOKAWA)
『ドッペルゲンガーの銃』 倉知 淳 (文藝春秋)
『夏を取り戻す』 岡崎琢磨 (東京創元社)
『ネクスト・ギグ』 鵜林伸也 (東京創元社)
『碆霊の如き祀るもの』 三津田信三 (原書房)
『パズラクション』 霞 流一 (原書房)
『晴れ時々、食品サンプル ほしがり探偵ユリオ』 青柳碧人 (創元推理文庫)
『本と鍵の季節』 米澤穂信 (集英社)
『ミダスの河 名探偵・浅見光彦VS.天才・天地龍之介』 柄刀 一 (祥伝社)
『骸の鍵』 麻見和史 (双葉社)
『メーラーデーモンの戦慄』 早坂 吝 (講談社ノベルス)
『黙過』 下村敦史 (徳間書店)
『誘拐の免罪符 浜中刑事の奔走』 小島正樹 (南雲堂)
『私の頭が正常であったなら』 山白朝子 (KADOKAWA 幽BOOKS)

◎評論・研究部門(タイトル50音順)
『奇譚倶楽部』(新訳版、G・K・チェスタトン)の解説 小森 収 (創元推理文庫)
『娯楽としての炎上』 藤田直哉 (南雲堂)
『刑事コロンボ読本』 町田暁雄・編 (洋泉社)
『少年少女のためのミステリー超入門』 芦辺 拓 (岩崎書店)
『推理小説批評大全 総解説』 松井和翠 (同人誌)
『探偵小説の黄金時代』 マーティン・エドワーズ、森英俊、白須清美・訳 (国書刊行会)
『21世紀本格ミステリ映像大全』 千街晶之・編著 (原書房)
『日本推理作家協会70周年 書評・評論コンクール応募集成』 野地嘉文
『日本探偵小説を知る150年の愉楽』 押野武志、谷口 基、横濱雄二、諸岡卓真・編著 (北海道大学出版会)
『ホームズと推理小説の時代』 中尾真理 (ちくま学芸文庫)
『本格からHONKAKUへ』 島田荘司 (南雲堂)
『本格ミステリ漫画ゼミ』 福井健太 (東京創元社)
『マニエリスム談義 驚異の大陸をめぐる超英米文学史』 高山 宏、巽 孝之 (彩流社)
「CRITICA 第13号」(探偵小説研究会・編著)所収の「明治を超越する『化物』たち」 池堂孝平 (同人誌)

3.新入会員の紹介

矢(や)樹(ぎ) 純(じゆん)(太田忠司/深水黎一郎=推薦)
自己紹介=1976年、青森市生まれ。第10回「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉として『Sのための覚え書き かごめ荘連続殺人事件』(宝島社)でデビュー。最新作は2017年発売の『がらくた少女と人喰い煙突』(河出書房新社)。漫画原作者としても活動しており、代表作にテレビ朝日でドラマ化された『あいの結婚相談所』(小学館)、週刊ヤングマガジン連載の『バカレイドッグス』(講談社)がある。(2018.12.7)
推薦理由=御本人いわく「このミス大賞作品より本ミス大賞作品を好んで読んでまいりました」とのこと。これから本格ミステリの作品を書いてくださると期待します。(太田忠司)

似鳥(にたどり) 鶏(けい)(太田忠司/深水黎一郎=推薦)
自己紹介=1981年、千葉県生まれ。おっさんと美少女の二人組。原稿はすべて美少女の方が書き、インタビューやイベント出演などはおっさんが担当している。印税等はおっさんが受け取り、適当に天引きしてから美少女の方に渡している。非常によく喋るため邪魔極まりないが、トマトが苦手なので、トマトを口に押し込むと嘔吐して黙る。その後、死ぬ。(2019.1.8)
推薦理由=デビュー以来、旺盛な執筆で次々と良作を生み出しおり、本格ミステリ大賞候補にも選ばれた逸材です。(太田忠司)

陸(りく) 秋(しゆう)槎(さ)
自己紹介=中国北京出身、復旦大学古籍研究所修士卒業。2o14年来日。著書に長編『元年春之祭』(早川書房2018)、短編「1797年のザナドゥ」などがある。好きな本格作品は『厭魅の如き憑くもの 』『メルカトルかく語りき』。「新本格」の影響を受けてミステリを執筆しはじめました。(2019.2.22)
推薦理由=2018年、『元年春之祭』(中国・新星出版社 2016年)の邦訳(ハヤカワ・ミステリ)が昨年の各ベストテンにおいて高い評価を受け、一躍華文本格の寵児となった陸 秋槎さんは、現在、金沢を拠点に執筆活動をされておられます。大学生の時、麻耶雄嵩さんと三津田信三さんの作品を読んで、日本の新本格の魅力に目覚めたという陸さんは、〈ミステリマガジン〉での法月綸太郎さんとの対談で、本格ミステリへの熱い思いを吐露しておられます。今後の活躍が大いに期待される陸さんを、当クラブに推薦させていただきます。(戸川安宣)

(2019.02.28発行)

「本格ミステリ作家クラブ通信」第72号

1.第19期総会・第19回「本格ミステリ大賞」贈呈式までのスケジュール

 12月10日(月) 推薦作アンケート用紙を配布(*本「会報」に添付)
 01月11日(金) 消印有効でアンケート〆切(FAX・メール同日有効)
 02月16日(土) 候補作選考委員会=青井夏海、芦辺拓、乾くるみ、大森滋樹、松浦正人
*候補作家の承諾確認後、候補作決定「速報」をハガキとメールで通知(大賞運営委員=霧舎巧、鳥飼否宇、遊井かなめ)
 02月下旬     候補作の選考経過と本選「投票用紙」を全会員に配布
 05月04日(土) 消印有効にて投票〆切
 05月10日(金) 公開開票式
 06月22日(土) 総会・贈呈式パーティ
          15:30~17:00 総会
          17:30~19:30 贈呈式
 06月23日(日) 受賞記念座談会予定(都内某所、詳細未定)

(2018.12.10発行)

「本格ミステリ作家クラブ通信」第71号

1.第18回本格ミステリ作家クラブ総会の報告

(1)議長団の選出
 会則26条に基づき、執行会議のメンバーから以下の議長団を選任した。
 議長・芦辺 拓 副議長・深水黎一郎 書記・千澤のり子

 議長団は拍手多数をもって承認された。また議事進行において特に異議のない場合は、拍手で承認することを確認した。

(2)東川篤哉会長の挨拶
 本日は雨の降る中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。今年も本格ミステリ大賞が決まり、アンソロジーも刊行され、この時を迎えることができました。会員の皆さま、賛助会員の皆さまのおかげだと考えまして、御礼申し上げます。会員と執行部とが顔合わせる機会もそうそうありませんので、忌憚のない意見をお聞かせいただき、今後の活動に反映したいと思っております。よろしくお願いします。
 

(3)定足数の確認、入退会者の承認
 出席者28名、委任76名で、合計104名となり、正会員数の182名の半数を超えているので定足数を満たし、会則27条により総会が成立した。

 続いて執行会議が承認した新入会員について議長から簡単な紹介がなされた後、

 誉田龍一(芦辺 拓/遊井かなめ=推薦)
 芦沢 央(深水黎一郎/円堂都司昭=推薦)
 秋好亮平(千街晶之/円堂都司昭=推薦)
 以上3名の入会が全会一致で承認された。

 また、賛助会員として株式会社ブックリスタが加わった。

(4)第17期活動報告
 太田忠司事務局長より、第17期の活動内容が報告された。同内容は会報を通じて会員に報告済みなので省略する。

(5)第17期会計報告
 会計担当の麻耶雄嵩より第17期会計報告が行われた後、監査の獅子宮俊彦による監査報告が行われ、問題がないことが確認された。別紙「第17期決算」および「収支決算書」を参照。総会配布の「監査報告書」のプリントは省略する。

(6)第18期(18年)活動計画・予算案
 本格ミステリ大賞選考の見直しが行われ、変更なしとなった。
 太田忠司事務局長より第18期の活動計画、麻耶雄嵩より予算案についての説明がなされ、承認された。

(7)20周年記念について
 円堂都司昭から南雲堂で本格ミステリ大賞の評論・研究部門の受賞者による評論集アンソロジー刊行の企画案、千澤のり子から株式会社E-Pin企画のイベント開催の企画案の報告があり、いずれも協賛の形式をとり、進行状況を随時報告すると告知があった。

(8)今後の運営について
 議長から新会員募集の呼びかけのお願いと、イベント担当の北村一男から授賞式翌日の記念トークショーと合同サイン会について説明が行われ、終了した。

2.第18回「本格ミステリ大賞」贈呈式の報告

 第18回定期総会の後、日本出版クラブ会館「鳳凰の間」で、第18回「本格ミステリ大賞」贈呈式を開催した。贈呈式は会員の杉江松恋氏の司会で進行された。当日は約115名の方々に出席をいただき、盛況のうちに幕を開けた。

 太田忠司事務局長から「本格ミステリ大賞」決定までの経過が報告された後、東川篤哉会長から『屍人荘の殺人』で小説部門を受賞された今村昌弘氏、『本格ミステリ戯作三昧―贋作と評論で描く本格ミステリ十五の魅力』で評論・研究部門を受賞された飯城勇三氏に、賞状と正賞のトロフィーが授与された。

・今村昌弘氏の受賞コメント
 いろいろな方がSNSを通じて宣伝してくださり、話題が広まって、波及して今の結果にいたると強く思っています。これまでミステリに深く付き合ってきた人間ではありませんので、今まさに、ミステリのワクワク感を感じながら本を書いています。ミステリ作家としてはもちろん、一読者としての興奮を忘れないようにしながら、本格ミステリの発展に力添えしていけたらと思っておりますので、これからもどうぞよろしくお願いします。本日はありがとうございました。

・飯城勇三氏のコメント
 タイトルに「本格ミステリ」が入っている本で受賞できて、大変喜んでおります。本格ミステリは「自由な読み方ができる」と昨年のスピーチで話した言葉が自分に跳ね返ってきました。作家が書いていない作品を勝手に書いたり、その作品に感想を書いたり、読者の立場から好きに書かせてもらいました。贋作は文章が似ているだけではなく、プロット・トリック・キャラクターすべてを似せないといけないので苦労しましたが、辛さや難しさを楽しむことができました。それを受け止めてくださった皆さまに感謝しています。ありがとうございました。

 受賞の言葉に続き、日本推理作家協会の北村薫理事よりお言葉をいただいた。

 同会場では引き続き祝賀パーティーが行われた。戸川安宣氏の乾杯で始まったパーティーは大盛況となった。

4.年鑑ベスト・アンソロジーのリニューアルについて

 本格ミステリ作家クラブ選・編の年鑑ベスト・アンソロジー(ノベルス版とその文庫版)は、当クラブと講談社で協議し、以下のリニューアルを行うことで合意した。
・現在のボリュームでは高価格になるため、収録作数を減らし、スリム化・低価格化を図ることで訴求力を高める。
・来年以降、新規に編纂するアンソロジーは、ノベルス版を経て文庫化するのではなく、最初から文庫版で刊行する。
・ノベルス版『ベスト本格ミステリ2015』~『ベスト本格ミステリ2018』に関しては、ノベルス版の収録作選考過程で特に評価が高かった上位5作を抜き出した形で文庫化する。このスリム化により、価格を千円以下に抑える。
・スリム化した文庫版の第一弾『ベスト本格ミステリ TOP5 短編傑作選 001』は、2018年12月刊行。収録作は次の通り。

芦沢央「許されようとは思いません」
下村敦史「死は朝、羽ばたく」
織守きょうや「三橋春人は花束を捨てない」
大山誠一郎「心中ロミオとジュリエット」
歌野晶午「舞姫」
・解説 廣澤吉泰

・『ベスト本格ミステリ2016』~『ベスト本格ミステリ2018』の3冊も同様にスリム化した形で順次文庫化し、次いで2018年発表作品から5作程度を選んだオリジナル文庫アンソロジー『〇〇2019(仮。タイトル検討中)』を編纂する。これら4冊は2019年中に刊行するが、スケジュールについては講談社と協議中。

5.新入会員の紹介

阿(あ)藤(とう) 玲(れい)(佳多山大地/東川篤哉=推薦)
自己紹介=197X年岡山県生まれ。2017年『お人好しの放課後』(東京創元社)でデビュー。2018年8月、続編の『お節介な放課後』を上梓。新本格ムーヴメントの頃、読書の達人たちに囲まれて、ミステリばかり読んでいたのが青春の思い出です。よろしくお願いいたします。(2018.10)
推薦理由=阿藤玲氏の作品は新本格ミステリのひとつの核心である青春小説としての魅力にあふれ、今後の活躍が大いに期待できる。(佳多山大地)

イクタケマコト(天祢 涼/千澤のり子=推薦)
自己紹介=福岡県生まれ。横浜市在住。ミステリの挿絵や装丁、ミステリ作家の似顔絵などを多く手がける。マンガ「名探偵ネーコンの事件簿」を連載中。 (2018.6)
推薦理由=ミステリへの造詣が深く、すばらしいイラストレーターでもあるイクタケさんは、ミステリの新たな可能性を切り開いてくださると思います。(天祢 涼)

稲(いな)羽(ば)白(はく)菟(と)(千澤のり子/千街晶之=推薦)
自己紹介=大阪市生まれ。早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒業。著書は第9回「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」準優秀作『合邦の密室』。本格ミステリはギリシャ悲劇の様に恐ろしい運命に対峙する人間の姿を描く事ができる、現在稀有な文学手法だと信じています。(2018.10)
推薦理由=稲羽白菟さんは、アガサ・クリスティ、横溝正史、島田荘司作品を特に敬愛し、本格ミステリ独自の人間ドラマに着目して実作で示そうとしている気鋭の方です。本クラブ会員にふさわしいと思い、推薦いたします。(千澤のり子)

今(いま)村(むら)昌(まさ)弘(ひろ)(大崎 梢/太田忠司=推薦)
自己紹介=長崎県生まれ。岡山大学卒。『屍人荘の殺人』で第二十七回鮎川哲也賞受賞。(2018.10)
推薦理由=デビュー昨『屍人荘の殺人』がミステリ系の各賞を総なめ。第18回本格ミステリ大賞も受賞。今後の活躍が期待される新鋭です。(大崎 梢)

七(なな)尾(お)与(よ)史(し)(深水黎一郎/関根 亨=推薦)
自己紹介=静岡県生まれ。歯科医師。2010年7月、第8回「このミステリーがすごい!」大賞の隠し玉としてデビュー。デビュー作は『死亡フラグが立ちました!』。趣味は映画鑑賞。そーいえば最近YouTubeでゲーム実況初めました。(2018.8)
推薦理由=「このミス」の隠し玉でデビューされた七尾さんは、その後も質の高いミステリを書き続けられており、本会に推薦すべき人物だと確信しています。(深水黎一郎)

(2018.10.24発行)